カテゴリー: 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症

  • 【改善事例】歩行困難、排尿困難などの症状がある多系統萎縮症に悩む70代女性

    患者

    76歳 女性 群馬県 みどり市

    初診

    平成24年11月

    主訴

    歩行困難 排尿困難 ろれつが回らない

    症状

    5年ほど前より、歩行がおかしくなった。

    昨年9月に脊髄小脳変性症と診断される。

    今年8月に多系統萎縮症と診断される。

    現在、歩行困難、ろれつが回らない、オシッコの出が悪い等が日常生活上での問題となっている。

    先月、磁力治療を15回受け、ろれつ、歩行、書字が少し改善した。

    3年前に硬膜下血腫になっている。

    50代からシルバー太極拳ずっと続けていたが、今は辞めてしまった。

    治療

    週に一回のペースで治療をスタート。

    脳の血流を高めるために頭皮鍼と、脳へ行く椎骨脳底動脈の血流をあげる治療をメインにおこなった。

    頭皮鍼は、脳の病気全般で良く使われる方法で、中国ではポピュラーな治療法である。

    椎骨脳底動脈は、心臓からスタートした血流が首の骨の中を通って脳に入っていく重要な通り道で、ここの血流を高めることは脳への血流を高めることにつながるものである。

    使用したツボは、足三里 解谿 中脘 陰谷 曲泉 四瀆 頭皮鍼 崑崙 瘂門 天柱 etc

    経過

    一回目の治療後、おしっこの出が良かった気がするとのこと。

    歩いている時に膝がガクッとなりそうでフラフラした。磁気治療をした時もガクッとなったことがあった。

    ※二回目の治療中にトイレに行き、オシッコが良く出た。

    二回目の治療後、膝のガクッとすることは無かった。

    三回目の治療後、かけ足ができたとのことで、非常に喜んでいた。また、かかりつけの内科医に歩き方がよくなったと言われたとのこと。

    四回目の治療後、一時期ろれつが良くなっていた。

    五回目の治療後、尿の勢いが良い。尿の出るまでの時間が短くなった。

    その後も同様のペースで治療を十回まで継続。

    尿の状態は依然として良い。歩行は披露した時にスムースに足が出ない時がある。という状態だった。

    訪問リハビリを受けるようになり、患者宅から当院が遠いこともあり、訪問リハビリに集中して受けることにしたため、治療はいったん終了となった。

    治療のふりかえり

    多系統萎縮症は比較的進行の早い難病と言われていますが、この患者さんはそれほど進行が早くはない状況でした。

    典型的な歩行困難や、構語障害とともに、排尿困難にも悩まされていました。

    今までの経験上、歩行困難や構語障害に対しては一定の効果をあげられていましたが、排尿困難に対してはどれほど効果があるか分かりませんでした。

    しかし、実際に治療を開始していくと、排尿困難に対する効果が一番現れました。

    一回目の治療から、排尿困難の改善がみられ、治療中にもトイレに行くことが何度かある程でした。

    歩行困難、構語障害に対しても効果が見られていましたが、最終的には治療中断となってしまいました。

    これは脊髄小脳変性症もふくめ進行性の難病の継続治療の難しさが如実に表れています。

    進行性の難病であるので、最低でも進行を遅らせる、できれば進行を止めるか元に戻すことができればという目標で治療を継続していきます。

    最初は、症状の改善が明確に感じられやすいので、治療継続へのモチベーションも高くなるのですが、長期にわたって治療を続けて症状の進行が遅くなったり、止まっている場合、それは効果が出ていることになりますが、患者さんとしてはだんだんとマンネリ化してきてしまいます。

    そのため、最終的には治療を中断することになってしまうわけです。

    ここが進行性の難病を治療していく時の難しさになります。

  • 【改善事例】20年来の脊髄小脳変性症に悩む50代女性

    患者

    59歳 女性 群馬県 安中市

    初診

    平成20年8月28日

    主訴

    歩行困難 ふらつき 

    症状

    20年前から。最初、美容院でふらついていることを指摘されて気がついた。また同時期に、しゃべりにくい、歯が浮いたような感じになるなどの症状も出るようになった。

    最初は病院に行って検査をしてもらっても原因がわからず、脳梗塞の薬が出されていたが、その後に脊髄小脳変性症と診断され、セレジストが処方されるようになった。

    まだその当時は、他人に気がつかれない程度の状態で、13年間は症状が進行することもなくほとんど変わる事がなく同じような状態が続いていた。

    7年前にそれまでの仕事を辞めて、新しい仕事に就いたころより歩行状態が悪くなりはじめ、またぐ動作がこわい、体重移動がスムーズにできないなど歩行困難の症状が出るようになった。

    現在の状態は、言葉がでにくい(ろれつが回らない)、眼振、キャップを指先でつかもうとすると落としてしまう。字が書きにくい、首と上半身の揺れ、ふらつき歩行(杖使用)

    東京の中医針灸院に一週間に二回通院して鍼灸治療を受けていたが、院が移動して通院時に歩かなければならない機会が増えてしまったこともあり、また、週二回東京まで行くことも大変になって来たので、群馬県で良い鍼灸院を探していた。

    治療

    週に一回のペースで治療をスタート。

    頸椎の問題があって、椎骨脳底動脈不全も認められた。

    脳への血流を改善していくことは、脳疾患に対しては大変重要である。

    椎骨脳底動脈が脳へ流入していく経路には、ダイレクトに小脳にコンタクトしているので、この血流をあげることは特に必要なことである。

    使用したツボは、中封 四瀆 陰谷 曲泉 上脘 中脘 下脘 頭皮鍼 攅竹 魚腰 etc

    経過

    四回目の治療時に、構語障害(言葉の出が遅い、ろれつが回らない)に対する治療も希望されたので、新たに人中、素髎、下顎のツボもくわえるようになる。

    五回目の治療後、大方の状態は大きく変わらないが、ここ最近背筋が伸びるようになって姿勢が良くなった。歩行時、足の蹴り方に力が入るようになった。

    七回目の治療後、歩くきやすく調子良い感じに、構語障害(言葉の出が遅い、ろれつが回らない)も、以前より良い感じになってきた。

    この後も、週一回のペースで3年間にわたり通院。

    脊髄小脳変性症の治療を継続しつつ、胃の調子の悪さ、疲労感、頭痛、気分の落ち込み、むせる等の訴えが出ると、その都度それらの症状にも対処していった。

    歩行困難は治療直後は良くなるが、その後もとに戻ってしまう、ことを繰り返していたが、長いスパンでも改善傾向を示していた。

    治療のふりかえり

    当院での初の脊髄小脳変性症の患者さんで、この方をきっかけに大成堂では脊髄小脳変性症の患者さんを治療する機会が増えました。

    約3年間通院をされていましたが、脊髄小脳変性症は進行性の病気ですので、長期の継続治療をが必要です。

    治療直後は歩行困難も構語障害(言葉の出が遅い、ろれつが回らない)も軽減し、その後もとに戻るということの繰り返しをしていましたが、長期のスパンでは改善傾向を示して、以前はできなかった動作が出来るようになったりしていました。

    娘さんがうつ病で、家庭に問題があり、そのことでこの患者さんもうつっぽくなってしまうことがあり、そういった時には症状も悪化していました。

    症状の進行を遅くする、できたらストップさせることを目標に治療を継続しましたが、改善傾向を示した症状もあり、治療としては成功だったと思われます。

    お一人で来院できないので、いつもご主人に車に乗せてもらってきていましたが、ご主人のお仕事の関係で乗せて来てもらえなくなってしまい、残念ながら治療終了となってしまいました。

    この患者さんのお蔭で、脊髄小脳変性症の治療に対する理解を深めることができました。

  • 【改善事例】脊髄小脳変性症が発生し一人暮らしで将来が不安な50代男性

    50歳 男性 群馬県 高崎市

    主訴

    脊髄小脳変性症 体のふらつき 話がしづらい 字が書けない 

    症状

    4年前に、ズボンをはくときにふらついたのが最初の症状だった。

    更に、ろれつも少し回らないのに気がついた。

    その後、だんだんそれらの症状が、少しずつではあるが強くなってきた。

    2年後、群大で脳のMRIを撮影するも、特に異常が見つからず、経過観察となった。

    その1年後、群馬中央病院で、脊髄小脳変性症と診断される。

    診断された時から、症状が一気に進んだ気がする。

    現在、2ヶ月に一回受診し、薬が処方されている。

    便通不規則。

    3歳の時に交通事故、5歳の時に自転車で転倒し、額に大きな傷痕あり。

    仕事で役職についていて、部下への指示や、会議などで支障が出始めている。

    パソコンのキーボードも打ちにくくなっている。

    出来れば定年まで働きたいと考えている。

    また、一人ぐらしなので、この先もスムーズに日常生活が送れるようでいたい。

    治療

    週一回のペースで治療をスタート。

    椎骨脳底動脈血流促進のための治療を中心に、頭や口のツボに鍼をおこなった。

    経過

    一回目の治療後、それまで感じていた、気の遠くなるようなフラーとする感じが軽減。

    日常の動作も早くなったとのこと。

    ただ、ろれつは変化が無かった。

    二回目の治療では、一回目の治療に加え、額の傷に対する治療をおこなった。

    体に残る傷痕は、一見治っているような古いものでも、体に悪影響を及ぼすことがあります。

    そのため傷痕チェックをして、それが症状に関与している可能性がうたがわれたら、傷痕治療を加えていきます。

    部下の前で10分話をすると、息が切れてしまう。

    三回目の治療では、ろれつが今一つ改善傾向が見られなかったので、傷痕治療の時に発声練習も加えた。

    治療後、調子よい。半年前の状態にもどった感じ。

    言葉が出るようになった、意欲が出るようになったとのこと。

    その後も、同様の治療を同じペースで三ヶ月継続していき、良い状態を保つことが出来ていた。

    ただ、字を書くときの震えは、今一つ改善が見られなかった。

    三ヶ月を経過したところで、鍼灸治療を受けた後は三日間が特に調子よく、その後下り傾向になるので、週に二回の治療を受けられないかと患者さんから尋ねられたため、治療ペースを週に二回に変更する。

    そのペースで三ヶ月治療を継続。

    治療継続の中で、ぎっくり腰になったり、五十肩になったりといろいろな体のトラブルが起こったので、それにも対処していった。

    調子よく、一年前の状態に戻った感じと言っていた。

    そんなある日、電車で東京に行く用事があり、電車に乗ろうとして転倒をしてしまう。

    その後、腰や臀部の痛みのために夜中に目が覚めるような状態に。

    二週間ほどダメージが残り、痛みやしびれがでていただ、段々とそれは治まっていった。

    脊髄小脳変性症の状態としては、悪い方には行っていないとのこと。

    しかし、治療はここまでとなってしまいました。

    この患者さんは、車の運転を自分でしながら通院をしていました。

    その車の運転が、徐々に不安になってくるようになってしまい、通院をストップしたいとの申し出が患者さんからあり、治療はここでストップとなってしまいました。

    脊髄小脳変性症の鍼灸治療

    大成堂では、比較的多くの脊髄小脳変性症の患者さんが来院されています。

    これほど脊髄小脳変性症の患者さんが訪れる鍼灸院は、他ではほとんど無いかと思われます。

    きっかけは、一人の脊髄小脳変性症の患者さんからでした。

    その方が、インターネットで当院のことを見つけて来院されたのです。

    はじめての脊髄小脳変性症の患者さんでしたが、大成堂のメインスタイルとなる鍼灸治療である、長野式鍼灸治療法では症例もあったため、それを参考に治療を開始しました。

    また、ハーバード大学医学部で長野式鍼灸治療法を教えられている、松本岐子先生のセミナーに、その患者さんを連れて行って、治療の教えを直接受けに行ったりもして、試行錯誤をしながらはじめての脊髄小脳変性症の患者さんの治療を続けました。

    そのかいあって、その患者さんも、歩行のふらつきの改善や、ろれつの改善などの効果がみられ、とても感謝していただきました。

    脊髄小脳変性症の鍼灸治療の課題

    脊髄小脳変性症は進行性の病変です。

    そのため。腰痛や首肩こりのように、ある一定の期間治療をしたら良くなって、治療終了とはいきません。

    治る病気ではありません。

    治らないまでも、さまざまな症状を改善させ、その状態を維持していく必要があります。

    また、病気そのものも、できたら進行をストップ、もしくは進行を遅らせるという心づもりで治療をおこないます。

    そのため、ずっと治療を継続していくことになります。

    ある程度の期間は継続できるのですが、これが何年もとなると、自費の治療と言うこともあり段々と継続することが難しくなってしまいます。

    治療をストップしてしまうと、また進行してしまう可能性が高いので、それまでやった治療が無駄になってしまう可能性が高いので、できたら月一ペースにまでもっていっても治療を継続していきたいのですが、さまざまな事情で上手く行きません。

    このため、大成堂では「脊髄小脳変性症の治療をおこないます!」と前面に押し出すことはしていません。

    患者さんの声の中に、脊髄小脳変性症の患者さんのものがあり、それを見つけられてくる患者さんにのみ治療をスタートしているのが現状です。